恩田陸『Q&A』リアルタイム感想11

恩田陸『Q&A』幻冬舎、2004

進度

最後の章を読んだ。のはかなり前で一週間以上ほったらかしにしてしまった。気分的に。

回答者

心のサロンの人の娘。無傷で生き残った少女。学校に通っているような年齢になった。

いや〜、この宗教の話をエンディングまで見せられると思わなかったなあ。傍から見れば、完全に監禁、虐待。現代日本で起こると思いたくないけど、何か決定的なきっかけがあればこんな人生を歩む人もいるかも。ていうか今、いるのかも。

質問者

訪問者。少女よりもすこし年上の少女。

うーんネタバレに配慮せずに書いてきたけど、今回は特に何言ってもネタバレになるなあ。

結論、少女に特殊能力はあった。しかし生き残ったのも、その後の生活も、特別じゃないし神聖じゃないからくりがそうさせている。比べるものじゃないけど、ある意味で彼女はあの日Mにいたことで最も不幸になった人の一人なんだろう。不幸にしたって、事件を機に環境が変えられてしまう、認識が変わってしまう点において他の人々と何ら変わらない、凡庸な犠牲者にすぎない。

全体の感想

全体のオチであることを踏まえると、この「つまらなさ」はすごい。あの墓石のようなMの中に入っていたものを頑張って追ってきたけれど、どこまでもがらんどうな、ただ動物が集団/個体として反応を見せただけの話に思えてくる。やりきれない、割り切れない。何度か予想された犯人である、大きなものが知らぬ間にやってしまったんじゃないかとか、政府が意図的に仕組んだんじゃないかとか、もうそういう大きな存在も賢い支配者もいないような気がしてくる。

人は信じたいものを信じるのよね、過去や未来から何か警告があってもあんまり変わらない。うら寂しいさもしさとか、現実や自分自身と向き合う切実さとか、執筆当時のリアルな今が籠っている。Q&A形式の会話劇は生の声を届ける意図なのかも。どの人も台詞にキャラクターが滲み出ていて、傑作だと思うなあ。