東映×ブースタープロジェクトの清水組脚本家発掘オーディションに応募しませんでした

9月に清水崇監督の映画のプロットオーディション(https://www.toei.co.jp/release/movie/1226907_979.html)がありました。
実力足りず、応募プロットを作成すらできませんでした。このことになにか気付きがあったと、今更になって気付いたので、軽く文字に起こしておこうと思います。
例によって自分向けの記事です。

まずどんなプロットを書くお題だったのか軽く復習します。
・ジャンル:当然ホラーの、120分映画。
・条件:①主人公を10代~20代前後の女性とする、②日本国内であり、クローズドサークルの要素があること、③水がある場所(海・川・湖etc.)が物語に登場すること、④オリジナルアイディアであること。(上記URLからコピペしました)
・フォーマット:ワードA4用紙1枚(フォントサイズ12P /1000字程度 / PDFファイル) ※文頭に氏名・住所・電話番号・タイトル・メールアドレスをご記載ください。
条件の制約があったので、力試しというか演習としてめちゃくちゃいいなと思って手を出しました。
引っかかったのが、フォーマットでした。

実際に作成してみたプロットの内容としては、こんな感じです。あまり変わらないのですがバージョンaとbがあるので、両方貼り付けます。公開済みの作品ということになってしまうが、万が一使いまわす時はこの記事を抹消するのでいいです。
いかにつまらないか。

プロットa
タイトル:(未定)
日本列島が海に沈んでいく。琵琶湖なども面積を広げる。
誘拐被害者ケアサークルで知り合った少年少女四人は、治療が順調だと確かめるため、「快気祝い」として保護者に無断で二泊三日の無人島旅行に出た。一日目。船上で、独特の手の運びで「新作」を編むれんげ(17)。5歳の時に誘拐されたが父の不倫騒動で身代金が払われず、一か月の軟禁生活の後ひっそりと解放された過去を持つ。編み物は、当時身に着いた暇潰し兼逃避の手段。今では投稿するあみぐるみ講座の動画への大きな反響が生き甲斐。夜、四人は各々の心的外傷を再確認する。スマートフォンを見ると、誰にも安否確認は来ていない。ぎこちなく家庭の「治癒」を祝し、就寝。
二日目。朝、悟(14)が失踪したため島を探索し、女神を祀る小さな社を発見。誠示(18)は誘拐時の飢餓状態で霊感に目覚めたのが自慢で、日露戦争時の怨霊を察知する。社には軍歌集があったが、伊代(17)は島の地理から否定する。歪な曼荼羅に見える編み図を発見、れんげは編みつつ撮る。れんげの動画はむすんでひらいてをBGMにするのが恒例だが、同曲Go tell Aunt Rhodyは、伯母に一家で監禁された末に母を亡くした伊代のトラウマだった。錯乱した伊代が社を破損してしまう。電波の強い場所を探していた悟が現れ、孤児院からの心配を切望していることを発露する。
黙々と編むれんげ。物陰から老婆。家族への恨みを呟き編み込むれんげに、老婆は、髪を編んでできたものをれんげの編み物と合体させる。れんげは、あみぐるみが完成したことに興奮し早速投稿する。と、水位が上昇し島が沈み始める。誠示はこの島にいる兵士の怨霊によるものだと叫ぶ。脳裏には軍歌戦闘歌。悟は神の審判かもと讃美歌Greenvilleを歌唱する。伊代は社を壊したからだと確信し、修復に向かう。れんげはあみぐるみを疑い、絶望する。この編み物は人気動画として既に全国の人が模倣している。
手元のあみぐるみを解きながら溺れるれんげ。あみぐるみが一本の毛糸と髪に戻った途端水位は急速に下降、事態は収束する。冒頭の海に沈む日本列島も、安いCGみたいに元通りに。四人共、百年近く昔の今日から何件も保護者からの連絡が来ていた。
EDでむすんでひらいての曲に合わせて四人がダンスをする。海面上昇ダンス。

プロットb
タイトル:汲んで累ねて
ブラウザ上、ごくメジャーな動画サイトで流れる、動画「簡単あみぐるみの作り方【がちょう編】part2」。BGMは「むすんでひらいて」、ファンシーな雰囲気。3分08秒程度の長さ。切り替わり暗闇、現代ではなく本邦かもわからぬ場。呪術師が全身で舞踊を行う。奇妙で徐々に速くなる一定のパターンを繰り返す。最高潮に達する所で、背後の泉が噴き出し、水が全てを呑みこむ。
ラフティング中の揺れる4人乗りボートで、編み物をする由真(17)。隣でパドルを漕ぐ茜(17)に注意されて、視聴者の人、動画待ってくれてるし。お兄ちゃん的に、存在感消した方がいいかと思って……と呟く。由真の兄、朔(20)は前の座席で茜の方をチラチラ見つつ、漕ぐ。由真の編む手が独特の動きを繰り返し、編み物は面が重なって立体を成していく。手の動きは謎の舞踊と一致。
予報に反し空が荒れる。程なく舟は濁流に流される。荒れた川で、舟はぐるぐると動き回る。俯瞰だと舟の動きが先程の由真がした編み物の手と一致。パニックになる三人。黒いロープ(髪を編んだもの)で助けられ、老婆(97)が棲む川べりの小屋に滞在させてもらう。妖しさに不安になり老婆不在の隙に小屋を探索する。呪文で埋め尽くされた布に包まった一束の髪(ただのお守り)を見つけ戦慄する。落ち着こうと単純作業(編み物)をする由真。老婆に煮汁を供され温めてもらうが、三人は出ていこうとする。と、老婆は髪を要求する。差し出してしまう由真。
(中略)(※未作成のため空白)
動画を見ながら編み物をする少女宅。帰宅した母の手洗いの手の動きが一部、編み物の手と一致。ウイルスを持ち込まぬため、何度も何度も入念に手洗いを繰り返す……。

以上です。マジでつまんないっすね。
テーマは、「何気なく悪気なくやったことが因果関係は不明だけどパニックに繋がっていたら怖くないですか」。
やりたかったことは、むすんでひらいてという色んな歌詞を持つ曲をホラーにすること(バイオハザードでもうやってるらしい)と、主人公の行為とトラブルとを連関(因果関係ではない)させること。
主人公があみぐるみを編むときの手の動かし方が水を荒れさせる呪いと偶然の一致を起こしていて、気付いて止めるけれど主人公はそれを既に精力的に拡散させてしまっている。「世界はお前のもの―the world is yours-」=「お前のせいで世界がヤバい」という回答を用意してみたつもりでした。
練られているかはともかく、コンセプトが浮かぶまでの瞬発力は結構よかったと記憶しています。
他の案をもっと出すべきでしたが、根本的な問題がありました。

根本的な問題とは、実力不足です。具体的には、
・1000字で120分をまとめる収斂
・ホラーへの理解
・絵を伝える、生み出す演出力
でしょうか。
まず収斂ですが、修練とも言えます。作成したものを見ていただいてわかる通り、あらすじになっています。ここが酷い。どうしてもわからなくなって、プロットって何ですかと友達に聞いたレベルです。もっと抜粋して売りの部分だけ書いて、それでも筋が伝わるものを目指すべきでした。売りになるシーンだけで1000字埋まるようでなければ120分も間がもたないでしょう。
ホラーにあまりにも疎くて、そもそも選考突破は度外視していました。自分なりの怖さを掘り出すことはできても、それを他者へ届けるにはエンターテインメント性と普遍性が足りていないです。これは映像作品全体の作法だと思います。
マンガを描こうとし(てできなかっ)た経験から強く感じているのですが、絵や画を描くことって本当に難しいです。物語のテーマとか、人物の感情、お客さんの感情はコトですが、撮りたいモノにまでそれを具象化しなくてはなりません。モノの映像を連続させていった流れの総体に物語があるはずで、まだまだ怖いだったら怖い、人物の事情だったら人物の事情——そういうコトをモノで象徴させられるだけの具体性を詰める力が弱いでしょう。今は富野由悠季『映像の原則』を読み始めたところなのですが、そういう自覚を思い出させられています。

ホラーって、特撮ものの前提みたいなところがあると思うんです。今一番好きな番組デジモンゴーストゲームもホラーテイストです。もし子供向けの物語を創りたいなら、恐怖(困難でもあり、好奇心でもある?)への造詣を深めなければ先へは進めないような気持ちになりました。
ただまずは、頭の中で妄想される映像を、もっと具体的な図像に捉える訓練かなと思います。非常に無力感がありました。10月末締め切りの賞も応募できなかったのも、これが響いた感触です。
12月に入ったのではっきりしたこととして、2021年の仕事的進捗はゼロでした。