恩田陸『Q&A』リアルタイム感想その5

恩田陸『Q&A』幻冬舎、2004

回答者?

売れっ子脚本家、女性。既婚。Mに近いアパートの一室を学生時代から20年借りていてたまに仕事場にしている。

雑司ヶ谷の霊園ってそのまんま雑司ヶ谷霊園夏目漱石なのかな? 映画の具体例はいくつか出てくるけど文豪が誰かは忘れてるってなんとなく脚本家っぽい。仕事のしかたは、作者本人の実体験も踏まえてるんだろうなあ。なんでみんな脚本家になりたがるのかねえ楽しくないでしょおもしろいけど。

事件については、Mによって電波が遮断されていることくらいかな。笹原久芳の話でも気付かなかった近隣住民もいた気がするから、執筆中の脚本家が事件当日気付かなかったことはそれほど不自然ではない。この日に一話の最終稿?が上がったドラマがもうすぐ最終回の放映ということは、二クールか三クールか、結構な月日が流れていると思う。

前章の田中徹也が人間は現実の事件を愉しんでしまうという話だと解釈すると、今回はよりメタな、人間は事件を創作する、作者のような大きな力によって理不尽に人物の運命を決することができるという話にも見える。この脚本家が言うところの「見えないフィクション」なのだ。作者の思い付きで(忘却で)登場人物はあらゆる可能性を実現されてしまう。とはいえメタもサイコもやり尽くしているからね、それだけではない意味を探したくなるんだけど、うーんドラマの一話を書いた過程を具に示す意図がまだ掴みきれていない感覚。のちのちにわかってくるかな。

夢の白い家は、Mでもあるけど世界のイメージなんだよな。共感してしまう。それを目の前の友達に言っちゃうのどうなんだよって話ではあるけど、現実は空っぽな作り物で、自分しか生きていない。現代人に特有の感覚なのか、もっともっと古代からなのかもしれないけど、世界に自分しかいないと実感できる(現実を信じきれない)せちがらさがある。携帯電話で、いつでも他人・社会に繋がれているのにね。だからだね。

いやはや普通の会話で始まるのでびっくりした。

質問者?

他の章の質問者たちと同じ組織の人間だと思われるが明示されない。自分の仕事のことは話したがらない、寝不足。このお家で寝ちゃって次の日仕事行くのかな、何曜日かわかんないから休みかもしれないけど。ていうかそうか。あの事件の調査って、ボランティアとかではなくお給料の発生する仕事なんだ。普通に考えれば当たり前だけど、得体の知れなさから報酬と切り離してた。ドラマがハッピーエンドかどうかを気にしているのは、やっぱりMでの事件が幸せではないからなのかな。