恩田陸『Q&A』リアルタイム感想その3

恩田陸『Q&A』幻冬舎、2004

進度

麻生沙耶佳の章を読んだ。

麻生沙耶佳

小学六年生。当時五年生(ということは他の語り手たちの年齢も事件当時は一、二歳若いと見た方がいいのかな。なんとなく、事件は2002年2月11日という気がしてきた)。今時の、習い事に忙しい受験生。友達も大体そう。ちょっと歪だね、世相を反映してるってとこかな。ソフトボールのチームでお昼を食べて、迎えが来るまでの間Mの一階にいた。

内田修造の話にあった、人にぶつかってたソフトボールの子どもの一人で、倒れちゃった子がこの麻生沙耶佳だね。

一階の玄関から一階の奥の休憩所に行く途中で倒れた。整髪料?の匂いで気持ち悪くなった。不審者情報としては黒っぽい人が後ろのほうから走ってきた。匂いの元がこの黒っぽい人だとは言っていない。休憩所の奥の出口から出た。後ろに向かって走った人たちは、玄関から出ようとしたのか階段から降りてきたのかどういう人の流れだ?

そして今回も後半に伏線回収が。コーチはロリコンの変態、これさー写真も会社の広報誌のためじゃないんじゃないのきもきもきもきも。パパとコーチのせいで整髪料の匂いを嫌悪していて、同じ匂いがすると気持ち悪くなってしまうということなのかな。内田修造が死の臭いがわかるように麻生沙耶佳は性犯罪の匂いを感じ取れてしまう。二つ?歳下の美歌がコーチの毒牙にかかる予感に反応してしまったのだろう。Mの中や黒っぽい人が性犯罪属性だったのかもしれないけど、あの日の事件としては、麻生沙耶佳がMに行ったことで巻き込まれた事件としては、美歌ちゃんを守れずに失うことが該当するんだろう。パパ、コーチ、教頭のような男性が男性嫌いの生きづらい女性をつくる。

ママと南のママの対比も複雑な気持ちになる。南のママは、放任主義的で本人の積極性を重んじる。麻生沙耶佳(我ながら、毎回フルネームはもうやめればいいのに)のママは、自分を再生産しているんだよなあ。自分の好きな歌手から名前を取って、自分のやりたかったバレエをやらせて、パパの性犯罪から守らないことでコーチの性犯罪から友達を守れない女にした。でもこの教育ママを最悪とまでは言えないよね、麻生沙耶佳はママを捜すよね、世知辛いね。

教育分野、子どもへの性犯罪から社会問題を映し出していてキツい章だった。

黒っぽい人について、内田修造は液体を撒いた男の服装を白っぽい野球帽、黒っぽいセーターと表現した。同じ人物だと思う。この人物から整髪料の匂いがしたとすると、なんだか野球帽がコーチと繋がりそうな気がしてくるんだけど、コーチだったらソフトボールのチームメイトの誰かは気付くだろうからコーチとは別人なのだろう。麻生沙耶佳から見た事件の犯人は、誰に当たるのか。コーチというか悪しき男たち、かな。

質問者

麻生沙耶佳への質問者は「お姉さん」なので少なくとも現役世代の女性。いい人だよね、このやさしさがないと、ここまで話を引き出せなかったと思う。麻生沙耶佳が嫌がったという白っぽい背広を着て銀縁の眼鏡を掛けた(かなり派手な)若い男は誰の時の質問者なのだろう。書籍上で前にあった三章分(物語内の現実の時系列でもこの順番だったかはわからないよねってことを念頭に置いてしまう性分なのよ僕は)の質問者が全てこの人物なのかはわからないが、若い男だったとすると口調になんとなく納得がいく。