恩田陸『Q&A』リアルタイム感想その1

恩田陸『Q&A』幻冬舎、2004

選んだ理由

Q&Aというタイトルは知っていて惹かれた。よくある質問FAQについて最近考える機会があった。

進度

最初から、東都日報の記者の笠原久芳とその姉の外岡淑子の話だけ読んだ。

Q&A形式

「説明セリフというのはつまらないからやってはいけないのだ」と教えてもらったことがある。これは映画とかマンガとか映像的なメディアでの話だけど小説も読者の脳裏に映像が浮かぶように描くのがよいだろう。

で、このお話は、ある事件について、質問(インタビューか取材なのかな?)に対し各登場人物が、自分の見たこと、感じたこと、知っていることを答えるやり取りが書かれている。地の文は質問者のセリフなので会話劇みたいな形式。そのため、文量のほとんどが説明で占められている。

でもねーおもしろいわ!すごいですね。説明なんだけど語りになっていて、人物の当時の事情や話している瞬間の感情が描かれているからすごく自然に聴き入ることができる。ちゃんと映像でイメージできてまるで現実にこういう事件があって後からそれを調べているような気分になる。

笠原久芳

三十八歳。新聞記者だけあって、主観を示すにしても客観的にしようという配慮があるキャラクターになっている。質問の回答者としてはたぶん、良くも悪くも、という修飾が付く。記者としての本能と姉夫婦が巻き込まれたという個人的理由から、事件当日は好奇心をもって現場に急行した。当日以降もずっと取材をして記事を書いているらしいが読んだ部分では当日のことしか話さなかった。後のことはこれから別の人々によって明かされていくのだろうか?

外岡淑子

個人的にめっちゃおもしろかった。夢の話とかをアドリブで思い出してくれる、主観を赤裸々に話せる人という印象。キャラクターって大体男より女の方がおもしろい気がするわ。偏見。笠原より二歳年上の姉で発生当時は四階の婦人服売り場にいた。四階の人々が逃げる原因になった出来事は、奇妙な老夫婦がいたことらしい。老紳士の声は啓示、この老夫婦が犯人だとするなら逃げ出した私たちも犯人、など幻想的な可能性を冷静に明かせるのは結構人として強いなあと思った。この老夫婦の口は封じている辺りがニクいね、巧いね……。描写では、群衆心理と人混みでの圧死事故があって、ああこんな感じなんだろうな、こわいな、この人も自分もなんでなんとなく分かるんだろうなと思いながら読んでいた。

事件の真相、現時点の想像

あの日のMでは、複数のフロアいるいは全フロアで同時多発的に何か奇妙な出来事が起こっていて、それぞれの事件、引き起こした人物がなにかしらの繋がりを見せるのかな。うーん凡庸な発想。

テロっぽさはない。けど別の目的をもって、あるいは何の目的もなく発せられた何かしらの行為が、居合わせた者たちにパニックであったり欲動であったりを応えさせて、総体として見ると意味のまとまりを形づくるようなことはあると思う。質問は答えがあればこそ存在できるわけで、Qがアンサーを得るためのクエスチョンでもあり、アクションを得るためのキュー(CUEやないかい、Q入っとらんやないかい!)でもあるかもしれない、とタイトル考察を拵えておこう。